2024/11/19

「65歳以上の雇用確保」これで「努力した」と言えるのか?ー大阪シティ信金

 高年齢者雇用安定法の一部改正により3年前から、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業確保措置が「努力義務」として新たに設けられました。にもかかわらず、大阪のトップ信金である大阪シティ信金に40年以上勤務する組合員は、2年後に控えた65歳以降の雇用を「評価」を理由に拒否されようとしています。

 この法律の改正の目的は「高齢者が活躍できる環境の整備」を企業に求めている点にあり、企業による「評価」によって高齢者の雇用を打ち切るためのものでは決してありません。

「努力義務」を逃げ道に11.19団交

 11月19日に行われた金融ユニオンと大阪シティ信金との団体交渉では、金庫側より再雇用規程や就業規則を、交渉相手の組合側に手交することなく、その場で読み上げるだけという極めて不誠実な対応をとり続けたうえに、「改正高年法では65歳以降の雇用については義務ではなく、努力義務にすぎない」と違法性の否定に終始しました。

「努力義務」の理由は

 改正高年法で65歳以降の雇用を一律義務化せずに「努力義務」にとどめた理由は、「不況に苦しむ中小企業などへの一律義務化によって経営悪化・倒産などの事態を避けるためであって、大阪シティ信金のような経営基盤のしっかりした企業にまで65歳以降の雇用は「しなくてもかまわない」と言っているのではありません。

法改正後も「改善されず」

 大阪シティ信金では、法改正前から、金庫にとって「残ってほしい人」については個別に65歳以降も就労させる実態がありました。

 今回の法改正に伴い、新たに定めた規定で「個人評価」によって選別できるというのであれば、法改正によって実質的に何も変わっていないのと同じです。

 つまり3年前の法改正以降、「何の努力も」と組合から言われても仕方がない高年法の趣旨を踏みにじる冷たい対応だということです。

全国の金融機関では

 金融労連の全国の仲間から寄せられた65歳以上の雇用の実態は次のようなものでした。

 本人が希望すれば健康面などで特段の事情が無い限り、65歳以降の雇用が確保されている滋賀銀行や京都北都信金の例はあるものの、全国的には65歳以降の雇用について制度化されていない金融機関が少なくありませんでした。しかしながら運用面では、規程の中に「成績」「会社の判断」などで雇用拒否もあり得ると定めている企業も含め、雇用希望を拒否されたケースはないというところがほとんどでした。

 今回の大阪シティ信金のようにわざわざ、65歳以降の雇用に関する規程を追加したうえで、運用面でも平気で65歳で雇用打ち切りを示唆してくるケースは悪質と言わざるを得ません。

 組合は、この日の団体交渉の席上で「過去40年以上、ひとりの女性職員を教育指導してきたにもかかわらず、『企業の雇用基準に達していない』と判定すること自体、自らの教育指導体制の不備を認めている証ではないのか」として、これまで不十分だったフィードバックを含めたずさんな人事部の教育指導体制を指摘しました。

社会的な運動の構築を

 大阪シティ信金が人事考課による「平均以上の評価」を条件としている以上、「恣意的評価」により40年以上勤務してきた組合員の排除を許さないために、今後、団体交渉と並行して、機関紙・ホームページや監督官庁・業界団体などへの要請も含め社会に広く訴えていく決意です。

 自公政権の過半数割れという政治の変化を追い風に、65歳以上の雇用の「努力義務」を「義務」にできるよう運動を進めたいと思います。

(近畿支部)


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